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長屋宏和氏 SUPER FORMULA LIGHTS観戦記 2021 Vol.1
全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権公式ホームページをご覧の皆さんこんにちは。長屋宏和です。2021年第1回目として、第1大会の富士スピードウェイを観戦してきました。15年目を迎えたこのコラムですが、開幕3レースとも別のドライバーが勝つレースは初めてで、今から第2大会の鈴鹿サーキットが楽しみです。ジュリアーノ・アレジ選手(TOM'S)が今後どのような結果を残すか、またTOM'Sに小高一斗選手が戻ったときの展開も楽しみです。
開幕戦から3人の勝者
名取鉄平選手(Byoubugaura B-MAX Racing 320)と佐藤蓮選手(TODA FIGHTEX)の一騎打ちに思えた開幕ラウンドですが、雨の第3戦でチャンスを掴んだ三宅淳詞選手(MAX RACING 320)がウイナーのひとりに加わりました。
雨の中いちばん好調だったのは神晴也選手(Albirex-RT)でしたが、コカ・コーラ・コーナーで後ろを意識し過ぎたか、オーバースピードでコーナーに入り、立ち上がり縁石で滑ってまさかのスピンで後退し、表彰台を取りこぼしました。
第3戦のグリッド到着とともに降り出した雨で、グリッドでは各チームのタイヤはもちろん、ウイングなどのセッティング変更が慌ただしく行われ、そのセッティングの勝敗が分かれました。
スタートで出遅れ1周目にスリックタイヤに履き替えた佐藤選手は中盤までチャンスはありましたが、再度降り始めた雨の影響で勝負権を失いました。確実なファステストラップの1ポイントを獲得できたことは、シリーズポイントには影響できたでしょう。佐藤選手がレインタイヤで走り続けていたらどのような走りをしていたかは気になりますが、セッティングが三宅選手や神選手寄りであれば上位に来られていたかもしれませんが、B-MAX RACING TEAM、TOM'S寄りだとすれば7位止まりだったかもしれません。
乾くと読むか、雨が降ると読むか、大きな賭けでした。
雨が降るグリッドで、MAX RACINGの田中哲也監督がB-MAX、TODA RACING、TOM'Sのセッティングの方向性を見にきていました。勝負を決断した瞬間だったかもしれませんね。
女性ドライバー小山美姫選手
モータースポーツの世界は結果がすべて。男女関係なく、速さと結果だけです。現段階、走りや結果を見ると小山選手が日本人最速女性ドライバーと言えるでしょう。スーパーフォーミュラ・ライツはダウンフォースや横Gが強く、体力が必要となります。この部分がいちばんのネックかもしれません。
今まで多数の女性ドライバーを見てきましたが、速さが足りず、このスーパーフォーミュラ・ライツ(F3)からステップアップできていません。開幕ラウンドの小山選手のタイムを見ると、ベストラップは1秒以内でしたが、ただレースラップタイムにばらつきがあり、コンスタントにタイムを刻む力が足りていないように感じます。コンマ1秒タイムを変えない走りが身につけば、上位に近づけると思います。あとは、タイムの上がり方を見ると、路面状況に順応する力も身につけばと思います。
YouTube観戦方法
YouTubeで観戦の時、画面の隣にLIVE TIMINGを並べて、全ドライバーのセクターを比べて見るのが好きです。
第1戦は仕事の合間にYouTube観戦でした。見入ってみていたのは、佐藤選手のセクター1の抜群な速さとタイムをコンマ1秒変えずに走り続けるコンスタントな走りでした。ここに意識しながらYouTubeに映る加速とライン取りを見ながら、『なるほどね』と自己満足にひたっていました(笑)。
TOM'Sのドライバーが全員参戦1年目
新型コロナウイルスの影響で海外から外国人ドライバーが来日できず、日本人ドライバーにとってはチャンスが転がり込んだドライバーがたくさんいます。通常であれば小高選手はスーパーフォーミュラ・ライツでもう1年戦い、確実な実績を持ってスーパーフォーミュラに乗ったでしょうが、今年はTOM'Sの3人全員がスーパーフォーミュラ・ライツ1年目のドライバーとなりました。
その影響を減らすためか開幕前の合同テストで宮田莉朋選手が乗っていましたが、レースウイークでは全員が成長段階で、昨年までの勢いを感じませんでした。ここまで違うのか……と思うくらい、引っ張るドライバーの存在が大きいのかと感じてしまいました。
時間が経てば全員が慣れますが、セッティングや方向性の“正解”の判断は、1年目のドライバーがどこまで補えるか、今後の結果に期待して見ています。
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長屋宏和 HIROKAZU NAGAYA
1979年12月31日生まれ。13歳のときに見たF1日本グランプリに影響され、レーシングドライバーを志す。2002年、TODA RACINGから全日本F3に参戦。同年F1のサポートレースでクラッシュし、頚椎損傷C6の重傷を負うが、必死のリハビリで2004年、ハンドドライブでのレーシングカート走行を果たし、大きな感動を呼んだ。チェアウォーカーとなった後、自身のファッションへのこだわりを活かし、チェアウォーカー向けファッションブランド『Piro Racing』を立ち上げ話題に。2013年人間力大賞グランプリ、内閣総理大臣奨励賞受賞。いまも愛するスーパーフォーミュラ・ライツの現場を訪れるほか、ハンドドライブで自らサーキットを楽しみ、レーシングチームの監督や富士登山へ挑戦する等、今もそのチャレンジングスピリットは消えない。
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