長屋宏和氏 SUPER FORMULA LIGHTS観戦記　2024 Vol.2

　全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権公式ホームページをご覧の皆さんこんにちは。長屋宏和です。今年もスーパーフォーミュラ・ライツを僕の目線で観て、感じたことをこちらのコラムに書かせて頂きます。今回は鈴鹿サーキットで11月9日（土）〜10日（日）に行われた第6大会を現地で観戦しましたので、その様子をお届けします。

■野中誠太選手の抜群のスタート

　鈴鹿での第6大会では、3戦すべて野中誠太選手（PONOS Racing TOM'S 320 TGR-DC）のスタートの加速は抜群でしたね。第17戦の決勝こそフライングになったものの、そんなプレッシャーもあっただろう第18戦では失敗を恐れず、自信をもってスタートを切っていました。

　下り坂の鈴鹿サーキットのスタートは、ブレーキを離すと車重で転がり進んでしまうため、ブレーキを踏んだままでアクセルをあおって回転数を合わせ、クラッチをつなぐため、平坦な場所とは難易度は大きく変わります。次戦もてぎのスターティンググリッドは、平坦なので転がる心配はなく、スタート位置から1コーナーまでも距離が短いため鈴鹿ほどは差は出ないかもしれませんが、野中選手が“もてぎでも狙ってやる”とスタートの強みと自信を持っていることは確かです。

　ホンダ育成の小出峻選手とトヨタ育成の野中誠太選手のシリーズチャンピオン争いが注目ですが、トップの小出選手は鈴鹿大会では精彩を欠いていた印象で、チャンピオンシップ争いも9ポイント差まで縮まり、最終大会のもてぎラウンドがより楽しみになりました。第16戦でチームメイトのケイレン・フレデリック選手の前でゴールできなかった1ポイントが影響しないことを願います。どうした小出君……。

　ランキング3位争いもTOM'Sの小林利徠斗選手と中村仁選手が同ポイントで並び、もてぎラウンドが楽しみです。

■荒尾創太選手の追い上げ

　今シーズンTODA RACINGから参戦している荒尾選手。第16戦ではレース中盤、2番手を走行していましたが、トップから3秒以上離されていた差をファイナルラップにはコンマ4秒差まで追い上げた勢いは素晴らしかったです。

　ただ、あと一歩が届きませんでした。フランス帰りの18歳。この鈴鹿大会では良い手ごたえを得た様子のドライバーだけに、今後の活躍を期待しています。

■マカオグランプリにSFLからふたりが参戦

　2024年からフォーミュラ・リージョナルで争われる『フォーミュラ・リージョナル・ワールドカップ』として開催されたマカオグランプリ。予選を中心にクラッシュ多発の大荒れのレースでした。

　全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権からはトヨタ育成の2名、中村仁選手、小林利徠斗選手が参戦。日本勢は初めてのマカオグランプリでしたが、経験の差が大きかった印象でした。

　トヨタ育成は裾野を広げ、マカオグランプリ参戦で新たな経験を積んでおり、ホンダとトヨタの育成で切磋琢磨していただきたいです。やはりマカオグランプリは世界基準を感じられる特別な場所ですね。

■白熱したマスタークラス4台の争い

　第6大会では、マスタークラスの今田信宏選手、清水康弘選手、DRAGON選手、藤原誠選手の4台が、スタートからゴールまで白熱した争いをみせてくれました。

　今大会、予選までは清水選手に分がある印象がありましたが、第17戦、第18戦の決勝はスタートで後退した清水選手を各ドライバーが必死に抑えて見応えがありました。熱量は年齢なんて関係ない。クラッシュせずバトルする姿に、僕も『負けてられないな！』と勇気や元気をいただきました。

　木曜の専有走行1回目では、DRAGON選手のクルマに関口雄飛選手が、今田選手のクルマに佐々木大樹選手が乗り込んでいますが、これが基準タイムになるかと思います。ふたりの目標タイムにどれだけ近づけるかが4名の目標ですが、高い次元からのあと1秒は実はかなり大きいもの。試行錯誤する姿を応援しています。

長屋宏和　HIROKAZU NAGAYA
1979年12月31日生まれ。13歳のときに見たF1日本グランプリに影響され、レーシングドライバーを志す。2002年、TODA RACINGから全日本F3に参戦。同年F1のサポートレースでクラッシュし、頚椎損傷C6の重傷を負うが、必死のリハビリで2004年、ハンドドライブでのレーシングカート走行を果たし、大きな感動を呼んだ。チェアウォーカーとなった後、自身のファッションへのこだわりを活かし、チェアウォーカー向けファッションブランド『Piro Racing』を立ち上げ話題に。2013年人間力大賞グランプリ、内閣総理大臣奨励賞受賞。いまも愛するスーパーフォーミュラ・ライツの現場を訪れるほか、ハンドドライブで自らサーキットを楽しみ、レーシングチームの監督や富士登山へ挑戦する等、今もそのチャレンジングスピリットは消えない。

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